【第3回】現在のアイドルの定義とは何か② ~Perfumeからも考える~
――前回は、BiSの考察を通じて現在のアイドルの定義について話してもらいましたが、今回は主にPerfumeの話ですね?
はい。必ずしもPerfumeでなければならないというわけではないのですが、やはりPerfumeは「楽曲派」好みのアイドルの先駆けの一つだと思うので。
――先駆けという点について、もう少し説明してもらえますか?
アイドルの楽曲が、時には過剰と言えるくらいにその音楽性にこだわっているということは、今や珍しいことではないですよね。こうした流れのきっかけの一つが、Perfumeだと思うんです。ただ、Perfumeはこうしたことを意図的にやっていたというよりは、偶然が積み重なったという感じですが。
――では早速本題に。Perfumeは前回あなたが示した「アイドルとはアイドルである」というアイドルの定義とどのように関わってきますか?
結局、Perfumeがそれまでのアイドルが取り入れることがなかったテクノポップというジャンルを取り入れたのも、先ほどの定義を基にして考えることができる思うんです。実際、同じようなことをさやわかさんがすでに指摘しているので、引用しておきます。
そういう楽曲〔=テクノポップ〕を採用できたのは、まずはPerfumeがアイドルとして楽曲に捉われていなかったからこそなのだ。(『僕たちとアイドルの時代』168頁)
楽曲は別にアイドルの必要条件ではないからこそ、逆に楽曲にこだわるということも可能になった。それは、もはや「アイドルとはアイドルである」である以上、アイドルと名乗っていれば、どんなにマニアックで手の込んだ楽曲を採用しても構わないからです。
――確かに、Perfumeの「ポリリズム」は、当初アイドルの曲にしてはかっこよすぎるという理由で却下されそうになったという話を聞いたことがありますが、あなたのアイドルの定義を踏まえれば、そうした常識に逆らってテクノポップを採用したということも理解できますね。
そうなんです。さっきの「ポリリズム」の話からも分かりますが、依然はどうしても「アイドルの楽曲はここまで」というような歯止めが利いていることが多かったと思うんです。それが今やアイドルの楽曲の多様性は、すさまじいことになっている。もう少しアイドルらしさがあれば後は何でもありの状態ですよね。例えば、3776〔注:富士山ご当地アイドル3776(みななろ)のこと〕のプロデューサーである石田彰さんは、かなり意識的にこうした状況を踏まえて曲を作られているのかな、と思いますね。
――楽曲面以外での多様性についてはどうですか。
すぐに思い浮かぶのは、清竜人25ですかね。このグループについてはいずれもっと詳しくお話したいですが、一夫多妻制という設定の批評性は面白いですね。あと、以前からの清竜人ファンとアイドルファンが混ざって、ライブの客層がわけのわからない感じになっているのも面白い。もう一つだけ挙げておくなら、アイドルネッサンスですかね。徳永英明みたいに他の人のカバーをするのは、「アーティスト」においては割と普通のことだと思うんですが、アイドルにおいてはあまりなかったですよね。しかも、カバーしかしないですからね。
――しかしこうなってくると、アイドルのメンバーは誰でもいいってことにはなりませんか?
それは、よくPerfumeに対して言われることですね。ある意味ではそうだと思いますよ。アイドルであるために満たさなければならない条件(容姿・歌唱力・笑顔を振りまくこと等々)は、もちろん無くなったとまでは言いませんが、どう考えても自由度は格段に高まってきている。でもこれは、別にネガティブなことではなくて、様々な可能性を生み出しうるという点で、むしろポジティブなものだと思っています。それに、アイドル個々人の個性は、SNSの助けもあって、どうしたってにじみ出てくるものです。例えば、演出とか設定を重視するが故にライブ中はアイドル個人の個性はまったくわからなくても、接触イベントやツイッターやブログなどでその人の個性は表れているし、オフィシャルな場で個性が出る余地がなければ、それだけ一層それ以外の場面でその個性が輝くことも多々あります。PerfumeのライブのMCもそうですよね。
――なるほど。もう少し聞きたいところですが、今回もそろそろ終わりの時間が近づいてきました。ところで、このまえかなり感情的な記事を投稿されてましたね。
あぁ、あれですか。私が真剣だということをわかってもらいたくて、かなり意図的に大げさなくらいの文体で書きました。やっぱり体言止めと倒置法ですね(笑)。
――でもあれ、かっこいいこと言ってる風ですけど、実際「考えよう」って言ってるだけで、全然具体的にどうすればいいのかとか書いてないですよね(笑)。
いやいや、それでいいんですよ。それだけ伝わっていれば十分です。どのように考えるかはという問いに対する私の答えは、他の記事で私が喋った、あるいはこれから喋ることから理解していただけるはずなので。
――なるほど、そういうことだったんですね。ならいいです。じゃあ、最後に次回の予告お願いします。
はい。次回からは、ここまでの議論を前提とした上で、アイドルについての言説、とりわけアイドルファンによるアイドルについて言説について考えていきたいと思います。そのとっかかりとして、次回は香月孝史さんの『「アイドル」の読み方――混乱する「語り」を問う』という本を紹介しようと思います。
――わかりました。また次回もお願いします。