アイドル批評空間

アイドルについて少し掘り下げて考えるブログ

次世代アイドル「・・・・・・・・・」についてのメモ

    先日、OTOTOYのとある記事を発見し、次のようにつぶやきました。

    このインタヴューは、インタヴューが行われた時はまだデビューする前だった「・・・・・・・・・」(何と読むかは決まっていないらしい)というアイドルについてのものです。

    以下、私が気になった箇所をいくつか引用してみます。

 

視覚や聴覚を中心としているっていう点では、実は今の地下アイドルもこれまでのテレビ・アイドルと変わらなくて、動画にせよSNSにせよ在宅の人は必ずモニター越しじゃないとアイドルを見ることができない。でも僕たちはモニター抜きでアイドルと遠隔でつながることができるんじゃないかと考えていて。メディア環境の変化に応じてアイドルも変化してきた歴史があって、僕たちも動画サイトとSNS以降の対応すべき情報環境、つまりIoT時代や「ポケモンGO!」=都市の風景を拡張するAR時代の先に行きたいと思っています。言い方が難しいんですけど「今会えるアイドル」じゃなくて「常に纏える(まとえる)アイドル」を作りたいんです。

 

    かなりの大風呂敷を広げているようにも思えますが、しかし興味深い点もあります。この部分からは、この後でも述べられているようにアイドルを視覚・聴覚から解き放つ、あるいは視覚・聴覚以外の感覚へと開くということが帰結するでしょう。そして、このことは現場性と関連して述べられていきます。引用を続けます。

 

僕たちが目指すのは月曜から金曜も楽しくするアイドルなんですよ。非日常としてアイドルに会いに行って、つまらない日常を耐えるやる気を充填するんじゃなくて、日常そのものを楽しくしたいんです。

 

握手は地下アイドルの現場性の象徴だったんですが、まずそれを拡張したくて鼓動を飛ばしたいなと思った。それに加え、嗅覚はまだ利用が少ないし、現場と在宅を繋ぐ感覚なので、嗅覚を利用すればリアルタイムとしての“現場”を遷延させる仕組みが作れるかなと。

 

    以上から読み取れることは、視覚・聴覚以外の感覚の利用は、現場性の拡散をもたらすということです。先ほどの「常に纏える(まとえる)アイドル」とはそういうことなのでしょう。実際、「・・・・・・・・・」の「初観測」(初ライブのこと)後の特典会では、メンバーとの会話を録音するという「録音チェキ」なるものがあったそうです。なお、初観測の模様については以下のブログ記事を参照してください。

次世代アイドル「・・・・・・・・・」の初観測ライブに行ってきた - たくちゃんのわくわくブログ

     さらに、この現場性の拡散にかんして、公式サイトに面白い仕掛けがあります。

 

僕たちのホームページ(http://dots.tokyo/)には黒い「・」が飛んでいるんですけど、そのなかに浮かんでいるハートをクリックするとスマホandroidであれば振動するんですね。実はこれ、メンバーのリアルタイムの心拍なんですよ。

 

    これはまさに現場の「今・ここ」という一回性に揺さぶりをかけるものではないでしょうか。「いつでも・どこでも」身に纏えるアイドル。それは、最早ある一人の人間というよりは、ただの振動として私たちの生活のなかに入り込み、散らばっている断片であると言えるでしょう。「今・ここ」の一回的な現場から、「いつでも・どこでも」の複数的で散乱した現場へ。ここではもはや、一回性の特権性を見いだすことは難しいでしょう。

    もうひとつ述べておくべきはメンバーの名前や顔がわからないという点です。正確には名前はありますが、9人とも「・」という名前です。また、初観測において、メンバーたちはサングラスのようなものをかけており、顔を完全に識別することはできない。さらに、ステージ上に常に9人がいるわけではないので、さらに混乱は増します。

    こうした状況にもかかわらず、推しを公式サイト上に浮遊する点を押して選ぶことができます。その点からは、メンバーの性格や嗜好をうかがわせるような単語や分が連続的に放出されていきます。こうした情報に基づいて推しを決定するわけです。

   この推しの選び方についてもインタヴューで言及されているので再び引用します。

 

顔を隠したとしても、名前がなかったとしても個性ってにじみ出ちゃうと思うんですよ。そういうもので好きなアイドルを選ぶ体験をファン側ーー主に男性にしてほしい。そういう意味でも、今までアイドル界隈で推しを選んでいたのとは違うやり方を提示したいなと。

    

    ここを素直に読めば、推しを決定する際に、顔という生得的な側面が占める比重があまりに大きいという現状への批判ということになるでしょう(少なくとも別の選択肢は提示しています)。

   この批判は当然ながら妥当なものです。しかしながら、ここで提示されている新たな推しの選び方はすでにある程度は行われているのではないでしょうか。どうしても顔の好みの影響が大きいことは認めざるを得ない一方で、アイドルの性格や嗜好などの属性から推しを決めることはやはりありうるでしょう。これは例えば、Twitterやネット上に散らばったその人の属性についての情報の束に基づいて推しを決定するということであるでしょう。このことはまさに、私たちが先ほど紹介した公式サイトで行う決定と同じであるように思えます。

   さて、メモといいながらも思いがけず長くなってしまいました。少なくとも夜中にこんなことをわざわざ書くようにしむける力を「・・・・・・・・・」というアイドルが持っていることは確かだと認めざるを得ないでしょう。もちろん、この先どうなるかはわかりません。看板倒れになるやもしれません。しかし、当分は動向を見守りたいと思います。