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アイドル批評空間

アイドルについて少し掘り下げて考えるブログ

【雑記】アイドルと矛盾① ~「矛盾、始めました。」を引き受けるということ~

 アイドルは矛盾している。アイドルを演じることは、そしてアイドルを応援することは、まさに矛盾を生きるということに他ならない。

 Negiccoは、「矛盾、始めました。」と宣言する。

あたかも自分たちが矛盾を生きる存在であることを、引き受けているかのようだ。とはいえ、恐らくこの宣言は、彼女たちにとってたやすいものだっただろう。かつて、アイドルでありながら「アイドルばかり聴かないで」と歌ったのだから。

 考えてみれば、わざわざ宣言するまでもなく、アイドルは矛盾に満ちている。彼女たちは、私たちを大切にしている。時には、大好きとまで言うかもしれない。接触イベントに繰り返し通えば、顔と名前だって憶えてくれるかもしれない。

 しかし、どれだけ頑張っても限界はある。所詮は、演者と客の関係に過ぎない。

 翻って、普段の私たちはどうだろう。会社、学校、家庭、どんな場面でも所詮は何らかの仮面をかぶっているに過ぎないのではないか。アイドルと同じように。いや、そんなことはない。たとえ、誰にも見せていないにしても、「ほんとうの自分」は確かにあるはずだ…。

 果たして本当にそうか。そう思うなら、自分の心の中にあるその「ほんとうの自分」とやらを取り出してきて、よく目を凝らして観察してみるがいい。それも結局、「ほんとうの自分」という一つの仮面に過ぎないことが分かるだけだろう。

 確かに、アイドルは常に仮面をつけている。たとえ、移動中の車の生中継を見ていても、それは「本番中とは違う普段の姿」という新たな仮面をつけた彼女たちを目にしているに過ぎない。とすれば、あえて矛盾した存在であることを自ら示すようなNegiccoの歌詞は、非常にまっとうな宣言であると思えてくる。もちろん、自らが演じる存在であるという矛盾をアイドル自身が示すことは、今や珍しいことではないが。

 Negiccoの宣言からは、アイドルが自らを矛盾した存在として示すという自己言及性が見えてくる。しかしわが身を省みれば、それだけではなくて、私たちもアイドルに劣らず仮面を身につけている存在であるということが明らかになる。仮面しか存在せず、いい仮面も悪い仮面もない。仮面による戯れを、十分に楽しめばいい。

 アイドルは、矛盾を体現することで、実は世の中が矛盾から成ることにはじめて気づかせてくれる。「矛盾はじめまして」。そして、それを引き受けていくこと。「矛盾はじめなきゃね」。